14巻136話『最後の侍』では、ウイルクの言葉に単行本化の時点で変更が加えられたそうです。(以下、変更後の部分に赤印)
この2カ所の言葉、雑誌掲載時はこうなっていたそうです。
「アシリパは
山で潜伏し
戦えるよう
………………
……仕込んだ」
「シサムよ……
あの子に
随分と
仕込まれた
ようだな……」
この「仕込む」という表現に、掲載誌の発売当時、読者から多くの怒りの声があがりました。
「自分の子供のことで使う言葉か」
「子供自身の個を無視したひどい親だ」
それを受け、単行本では表現が変更されたのです。
(それでもやはり現在でも、このシーンまで読んだ時点で「この親、最低じゃないか?」となる人はいる様子です)
そうしてその後――
なんとアニメで、
変更前の台詞が復活しました。
なぜ、単行本でウイルクの言葉は変更されたのか。
なぜ、アニメでは元へ戻されたのか。
声音で感情表現ができる(字面だけで判断されてしまう恐れも無い)アニメなら、誤解されずに聞いてもらえる・・・という期待からでしょうか。
公式ファンブックで、ウイルクへの「野田先生からひとこと」にはこうあります。
彼のアシリパに対する姿勢は今の若い子には理解できないかもしれないです。分かってもらえるように描いて終わりたい。
ウイルクは、過去の時代の人です。
当時の大陸における少数民族の境遇を身をもって理解し、そしてまた北海道アイヌをとりまく状況も知り抜いていたからこその、あの言動――と考えると、どうでしょうか。
戦えなければ、国家に経済にすりつぶされて終わる。
我が子が味わうであろう未来を現実的かつ政治的に予見できたウイルクが、女仕事に関心持たない・狩り大好き・勉強嫌いなアシリパに与えられる最上のものは、何であったか。
それが端的に示されたのが、
赤毛のヒグマを前に「アシリパおまえが斃(たお)しなさい」とウイルクが姿を消す、あの羆狩りのシーンだったと思います。
このシーンがいつか、ウイルク自身の視点で描かれる時がくるなら(彼がいつでも助けに入れるよう銃を構えて見守っていた事は、姿を現した時の様子に表れていると思います)、もしくは、人が殺し殺される局面も体験し成長した現在のアシリパの視点でもう一度描かれるなら、よりウイルクへの理解を深めてもらえるかも・・・と思ったり。
・・・野田先生がぶつかった「壁」は、大陸から渡ってきたウイルクが北海道でぶつかった「壁」(だから彼は自分の来歴を話せなかった)と同質なものかも知れません。
下は、ウイルクとアシリパの関係を理解するのに良い記事と思ったので、紹介しておきます。
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碧海自由(あおみ みゆ) 様
画像作成:相方
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